アンサンブル紹介

器楽デュオ/トリオ「ヴェルトグラード」

 ロシアの器楽アンサンブルの伝統を維持・発展させるため二人の音楽家が、1998年にデュオを結成、「ヴェルトグラード(Вертоградъ)」というロシア語の古い言葉をグループ名とした。これは「果実のたわわに実る庭園」を意味する言葉で、アンサンブルの演奏スタイルをよく表している。ロシア文化において「ヴェルトグラード」には寓意的意味もあり、それは天上の楽園のイメージであり、最高の美や調和という理想へと向かう人間の精神の象徴なのだ。
 長年にわたり、デュオは精力的にロシア国内外の諸都市でコンサートを開いてきた。数百の出演、数十のコンサート・プログラム、コンクール、演劇や音楽つきの文学パフォーマンス、ラジオ放送、録音スタジオでの演奏、ソリストの伴奏など、さまざまな仕事をこなしてきた。
 デュオのレパートリーは多様で、さまざまな国や民族、時代の音楽を含んでいる。いくつかのテーマに基づくプログラムが編曲されてきた。
 アンサンブルの楽器も興味深い。バラライカとギターは、あらゆる面で最適な組み合わせだといえよう。

 これにバリトンを加えたトリオでの活躍も目覚ましい。
 アンサンブルを構成するのは、それぞれが、ソリストとしてまた、活躍する演奏家で、類のない創造的個性と、演奏の高い技量、芸術性を持っている。

ユーリー・ストゥパーク(バラライカ)
Юрий Ступак (балалайка)
 グループのリーダー。国際コンクール「クラシック遺産」(1997年モスクワ)での受賞者。1996年から、数々のアンサンブルや創作集団に参加し、演芸場や劇場での企画に参加する。楽器を弾きこなし、聴衆を魅了する正統派。ギターとのデュオを組んでから15年以上となり、聴衆に愛され、ロシアを含め20カ国以上で知られるアンサンブルに育て上げた。国際文化関係の強化における貢献により、このアンサンブルは、ロシア外務省付属ロシア国際科学文化協力センターから表彰状を受けた。

アレクセイ・ステパーノフ(ギター)
Алексей Степанов (гитара)
 ロシア全国コンクール(2003年モスクワ)、「ギターのモスクワ」コンクール(1997年)、S・オレホフ記念国際7弦ギター演奏コンクール(2008年ジュコフスキー)での受賞者。N・イワノワ=クラムスカヤの率いる「クラシックギター・クインテット」で、6弦ギター奏者として、また、7弦ギターを宣伝するソロ演奏家として活動を始める。7弦ギターは独学で身に着けた。演奏する音楽への深い知的アプローチと芸術的解釈の独創性が大きな特徴で、これが聴衆の心をつかんできた。

 1999年、アレクセイ・ステパーノフとユーリー・ストゥパクは、ロシア全国プーシキン・コンクールで1等賞を授与され、モスクワのプーシキン祭「詩人への贈り物」の賞状を受けた。2005年、ロシア全国エセーニン・コンクール「私は歌でお前を呼ばれた」の受賞者の賞状を得た。デュオは、キプロス、キューバ、タンザニア、ザンビア、チュニジア、モンゴル、ウクライナ、ギリシャ、米国、日本、ラトビア、タタールスタン、アルゼンチン、ウルグアイ、フランスなどで公演してきた。

アレクセイ・パルフョーノフ(バリトン歌手)
Алексей Парфёнов (баритон)
 2007年から、アンサンブルに加わったソリスト。V・I・サフォーノフ記念音楽学校(2000年、成績優秀)、ロシア演劇芸術アカデミー(GITIS)音楽学部(2005年)を卒業したほか、G・P・ヴィシネフスカヤ率いるオペラ歌唱センターでも学んだ。コンサートで歌える曲目には、ロシア内外の作曲家によるさまざまなスタイルや方向性のオペラ曲や室内楽曲のほか、ロシアやウクライナの民謡もある。アルメニア、アゼルバイジャン、イスラエル、チェコ、キプロスなどでの国外公演で好評を博した。トリオの一員としては、インド、リトアニア、エクアドル、スペイン、ミャンマー、グル時、タンザニア、ザンビア、ケニヤなどを訪れている。

 

ヴェルトグラード・トリオ公式サイト http://vertogradorg.narod.ru/

 日本ユーラシア協会では2005年に「ドリーム・ガーデン」として日本に招聘、各地で公演を行い、好評を博した。今回は、本来のトリオ名である「ヴェルトグラード」の名前で、新たな歌手パルフョーノフ氏を加えたメンバーを招聘する。

バラライカと7弦ギター

 

今回の演奏には、ロシアの伝統楽器が使用される。ユーリー・ストゥパークのバラライカとアレクセイ・ステパーノフの7弦ギターである。


バラライカ

ロシアの代表的な民族楽器と言えばバラライカだろう。三角形の共鳴胴に三本弦の弦楽器で、大小様々なサイズがある。最も一般的なものは「プリマ」と呼ばれ、アンサンブルや伴奏の他、しばしば独創に用いられる。超絶技巧から哀愁ただよう音色を活かした演奏まで、奏法は多岐にわたる。

七弦ギター

ギターの弦は普通6本だが、ロシアには7本弦のギターもある。ソ連時代の歌う詩人オクジャワ、ヴィソーツキーなどが愛用していたのも七弦ギターである。形状は一見普通のギターと同じだが、糸巻きが低音側に4個、高音側に3個で計7個ある。歌詞に使用されることもよくあり、今回のコンサートで歌われる「ハンガリーのジプシー女(二つのギター)」には「七弦の女友達」として登場する。